赤子と猫とコンラッドのひざ


家事を終えてひと息つこうとコンラッドは日当たりの良いリビングの窓際に座った。すると、ユーリがとてとてと歩み寄ってき た。コンラッドのところまで来るとにぱっと笑って顔をのぞき込んできた。
「こんー」
コンラッドはユーリに名前を呼ばれるのが好きだ。舌っ足らずだがコンラッドをコンラッドと認識してくれることが何よりもう れしく感じる。
「なんです、ユーリ」
返事をするとユーリはますますうれしそうに笑った。ユーリはコンラッドに背を向けるとよっこらしょとおしりをひざにおろし てきた。
コンラッドがユーリを引き寄せて深く座らせてやる。
「うっうー!」
ユーリは拍子をつけて何かしら歌い始めたようだ。楽しげな様子にコンラッドは目を細める。
「ご機嫌ですね、ユーリ」
「うーっ!」
こたえるようにユーリは手をバタバタさせた。
そのとき、猫がその身を滑らせてリビングに入ってきた。一番日当たりの良い場所にいたコンラッドとユーリへ真っ直ぐに向か ってくる。
「にゃー!」
猫に気づいたユーリはぱっと瞳を輝かせた。
「そうですね、猫さんですね」
コンラッドも相づちを打つ。
のほほんとした光景であったが、猫がコンラッドのひざに前脚をかけたところで一変した。
「やああぁっ!」
ユーリが急に大声をあげて猫に向かい手をあげたのだ。
「ユーリ?」
様子が急変したユーリにコンラッドが戸惑っていると、ユーリは小さな手できゅっとコンラッドのシャツを握ってきた。そして 、再び叫んだ。
「ゆーのっ!」
コンラッドは瞳をぱちくりさせてしまった。
「ゆーのぉお!」
ユーリはこれは自分のものだと、ユーリのものだと猫に主張しているのだ。
だが、猫に通じるはずもなく、猫はコンラッドのひざにぐいぐいと乗ってこようとする。
「やああぁ、ゆーの、ゆーのぉおっ!」
猫に盗られまいとユーリは大声をだし、仕舞には泣き出してしまった。
「ああ、ユーリ。泣かないで」
そんな主張をしなくとも。
「俺はあなたのものですよ」
ユーリに自分のものだと言われたのがうれしくて、頬をゆるましながらコンラッドはユーリを抱きしめた。




やこさんの赤子イラストにインスパイアされて。
(11.04.24)

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